ダヴィンチ 1.0 Pro 3in1を買った(1. 購入編)

DaVinci1.0Pro3in1-001

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昼休みに衝動買い

常駐先の同僚と
「3Dプリンタほしいですよねぇ、備品で買ってくれないかなぁ」
「20万円切ってたら一括償却資産になるから買ってもらいやすいらしいよー」
「20万円以下の3Dプリンタっておもちゃでしょ?」
…って会話を楽しんだあと、
何の気なしに探してたら、ちょうどXYZprintingからダヴィンチ 1.0 Pro 3in1が発売になってた。
「スキャナもついて、レーザ加工もできて15万を切る?」
その瞬間、ポチりそうになったけれど、伊達に5年もMaker Faire Tokyoを手伝っていないので、積層式3Dプリンタを選ぶ時の重要な点を思い返した。

重要、その1: ABSが使える

積層式のフィラメントはPLAとABSが主流。
PLAはABSよりちょっと安く、早く、硬い。
だけど、70℃くらいで変形してしまうので、夏の車内や熱を帯びる部品のカバーに使えない。
「硬い」は、しなりにくく割れやすい、とも言えて、ヤスリがけもしにくい。

ABSはPLAより熱に強く、良い意味で柔らかい。
だけど、冷えるときに縮まる性質のせいで、底面部から反ってしまう失敗がままある。
「3Dプリンタ教室」でPLAが良く使われてるのは、失敗しにくいから。
実際は、熱に弱くて加工がしにくいPLAを選ぶ理由なんてほとんどない。

ダヴィンチ 1.0 Pro 3in1はエクストルーダー(フィラメントを押し出す部分)がABS対応してるだけでなく、
テーブルを加熱するヒートベッドがあるので、反り返りを防ぐことができる。
文句なし、+10点。

重要、その2: 他社製フィラメントが使える

当たり前だけど、フィラメントは消耗品。
インクジェットプリンタと一緒で、ランニングコストを考えて選ばないと意味がない。
そこで、純正フィラメントの値段や手の入りやすさがまず重要。
ダヴィンチはそこそこ大手のXYZprintingなので、急につぶれたり、在庫なしで半年待たされるみたいな心配はなさそう。

そして、他社製フィラメントが使えるか。
他社製を使えるなら、純正より安いフィラメントを使うこともできるし、
最近は導電性のフィラメントや木質フィラメント、珈琲豆を原料にしたフィラメントなど面白いフィラメントがたくさんある。
これらを使えるかどうかは、フィラメントのリールをセットできるか、エクストルーダーの温度設定が幅広くできるか次第。

ダヴィンチ 1.0 Pro 3in1はリールをセットする機構こそ持ってないものの、公式に「他社製使えます」と謳っていて、エクストルーダーの温度設定も割と細かい。
文句なし、+20点。

重要、その3: 最大造形サイズ

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(写真はiPhone 6s用のケースです)
知ってる人は知っている、積層式の弱点。それは積層方向。
その名の通り、縦方向に積んでいくため、横方向からの外力には弱い。
高さのあるものをそのまま高く出力するより、
あえて横倒しに出力したほうが良いこともままある。
ということは最大造形サイズをそのまま使えるなんてことはほとんどない。
ましてや、最大造形サイズ=テーブルの大きさで作ったら、取り出すにもリカバリするにも大変なので、
カタログ値8掛けぐらいが正味の最大造形サイズだと思った方が良い。

ダヴィンチ 1.0 Pro 3in1は200mm×200mm×190mm。
長辺158.2mmのiPhone 6s Plusのケースも余裕で作れる。
文句なし、+15点。

重要、その4: ソフトウェアが使いやすいか

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出力の向きにしろ、サポート材にしろ、3Dプリンタはそれ自体でどうにもならず、
連携するソフトウェアに依存した部分がある。
個人的にはMacOSに対応しているか、も非常に重要。
もちろん、ごく一般的なstlやobjを読み込めないのは論外。

ダヴィンチは買う前にソフトウェアを無料でダウンロードできる。
XYZwareを試しに使ってみたところ、必要十分。
テーブルのどのあたりに出力されて、どれぐらい時間がかかるのか、知りたい情報がすぐ確認できることもわかった。
文句なし、+15点。

重要、その5: メンテナンス性

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特に、テーブルの水平キャリブレーション。
これができないとまともな造形物は出てこない。
1mmずれてたらアウト。
カスを取り除いたり、ベッドにテープを貼ったり、箱の中に手を入れる機会はけっこう多い。
筐体が曲線的なデザインでお洒落な製品に騙されるのはこの辺。
かといって、ガワ無しのオープンタイプは保温しきれないのでABSの失敗率が上がる。

ダヴィンチはオートキャリブレーション機能があって、筐体だけで誤差の測定と修正ができる。
ベッドの4か所にあるネジを「右に1コマ回してください」とか言われるので、それに従うだけ。
上部がガバッと開いて上からもアクセスできる。
開けることを十分想定していて、開放検知センサーがついているぐらい。
文句なし、+20点。

懸念点(というか、どうでもいい点)

要所を確認しただけで80点と評価されたダヴィンチ 1.0 Pro 3in1。
ついでなので、細かいところも見ていく。

懸念、その1: 出力精度

ダヴィンチは公称0.1mm。正直、よくわからない。
3Dプリンタをほぼ最終成果物のフェーズまで使うならこだわるべきかも。
多少粗くてもパテ埋めすればいいや。
で、実際に作ってみたら水漏れしないぐらいの密度があることはわかった。+5点。

懸念、その2: 単色

マルチで出力するやつを実際に見たことがないので利便性も含めて正直よくわからない。
ただ、Zオフセットのキャリブレーションがよりシビアになるんだろうなぁという予想。
ABSで出して塗装すれば多色造形物はできるので、あまり気にしない。+0点。

懸念、その3: スキャン精度

対象に斜めからレーザーを当てて、その反射を200万画素のカメラで見る方式。
原理的に凹面に弱いことと対象のテクスチャに影響されることが容易に予想される。
注意書きにも、光沢の強いもの、黒色など光を吸収しやすいものは苦手と書いてある。
とはいえ、概形だけ知れれば1から3Dモデルを用意しなくても良い。
なんせ、3Dスキャナを別に買ったら5万円ぐらいかかる。
精度が悪かろうと無いよりまし、+3点。

懸念、その4: レーザー加工

公式サイトに「紙、木材、革への刻印」とはっきり書いてあるので、切断は無理。
レザークラフト愛好家へのニッチなオプションかと思ったけど、
もしかして、紙フェノール基板を焦がせれば基板作成とかできちゃう?
ちょっとだけ期待、+2点。

懸念、その5: WiFi

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便利そうな気がするけど、ABSで出すなら出力前にマスキングテープかカプトンテープを貼るだろうし、フィラメントがどれぐらい残ってるかも気にする。
であれば、ステータスを随時確認できる液晶がついてればUSB接続でまったく問題ないと予想。
事実、その通りだった。+0点。

懸念、その6: 出力時の音

稼働中の音が他機種よりうるさいと聞いてて、確かにそれなりの音はする。
むしろ、電子音の設定をすると、動くたびにR2D2みたいな音がして「あ、今は曲線部だな」とかわかる。
これがけっこう面白い。
電子音が鳴ってる状態でも、同じ部屋で寝れるレベルだったので+5点。

トータル95点!!

家庭用の1台目なら十分すぎる。満を持してポチった。

最後まで迷ったのがZortrax Inventure
精度や使い心地が全部ワンランク上なのは知ってた。
でも、格下のM200ですら20万円オーバー。高い。無理。

最近よく質問されるのが、さらに後に発売された「ダヴィンチ Jr. 1.0 3in1と比較してどうですか?」ってやつ。
ほぼ同機能でお値段9万円とかなり安いけど、PLAしか使えない時点で無し。
家庭用という意味で大きさはちょうど良いので、これでABSが使えてメンテしやすければなぁ、って感じ。

長くなったので、実際の出力結果やスキャンなどについては別記事で。

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