2年前から、毎日同じ白いTシャツを着ることにした。
HanesのBeefy-T(ポケット付き、白)と、その下にグンゼのTシャツ専用肌着。
丸2年続けてみて、これが思いのほか快適だったので、何がどう変わったのかを書いておく。
それまでの悩み
当てにならない朝の感覚
幼いころから、起き抜けの自分の気温センサーはバグる仕様で、「今日は寒そうだな」と思って厚着したら、汗だく。「暖かいな」と薄着で出たら、震えてる。
天気予報を見ても、あんまり意味ない。
天気予報って気温は教えてくれるけど、体感温度は人それぞれだし、その日の体調や湿度でも全然違う。
結果的に体調を崩しがちだった。
都内の温度差と服選びの複雑さ
特に都内を移動してると厄介なのが、場所による温度差。
外は寒いのに電車の中だけ暑い、とか。
オフィスビルに入ったら冷房が効きすぎてて寒い、とか。
その都度、上着を脱いだり着たりするんだけど、そもそも「どの上着を持っていくか」の判断も毎朝必要になる。
クローゼットを開けて、天気予報を確認して、その日の予定を考えて、組み合わせを決める。
おそらく3分もかかってないんだけど、この3分が毎日積み重なると結構しんどい。
「今日は何を着るか」という小さな決断を毎日繰り返し、そして外す。
不毛すぎる。
きっかけは筋トレ
暑がり体質への変化
筋トレを始めて3ヶ月ぐらいで暑がりになった。
どちらかと言うと寒がり体質だったのに、基礎代謝が上がったんだろうか。
とにかく、いつもの感覚で服を着てると、やたら暑い。
「熱でもあるのかな?」と思ったんだけど、単純に、身体が熱を発するようになってた。
体型と自己肯定感
筋トレを始めて、ガリガリ体型を少し脱したので、着太りする必要性を感じなくなった。
それまでは、線の細さにコンプレックスがあった。
別にムキムキになったわけじゃないけど、「まあ、これでいいか」と思えるようになったら、服で飾る必要がなくなった。
真冬も問題なかった
おもしろ半分でどこまで行けるか試してたら、冬でも半袖Tシャツ生活で問題なかった。
もちろん、外出する時はアウターを羽織ったけど、何かを羽織る前提なら、中は薄着の方が動きやすいと気づいた。
と言うことは「年中同じ服でいけるんじゃないか」と。
「毎日服を選ぶ」という習慣から解放される可能性が見えた。
Beefy-Tに落ち着くまで
1年中同じ服を着るなら、どんな服がいいか。これは3ヶ月ぐらい試行錯誤した。
なぜ白いTシャツか
最終的に白いTシャツに落ち着いた理由は、
- 残念ながらボトムスはまだ固定化できてないが、白Tは何を履いても似合う
- 人に与える印象が「ナチュラル」「ニュートラル」でしかない
- 意外とフォーマルな場所でも場違いにならない
ただ、「白いTシャツ」と一口に言っても、その選定は想像以上に奥が深かった。
白の探求
白いTシャツはうっかりすると下着に見えてしまうので、胸ポケットがついてる型が良いと思った。
ポケットとして使うことはほとんどなくても、下着感が全然なくなる。
その上で、なかなかいいお値段のものも含めて15種類ぐらい白Tを試した。
アンミカの名言「白って200色あんねん」は本当だと思った。
Tシャツによって白の色味が全然違う。青みがかった白、クリームがかった白、蛍光っぽい白。
例えば、同じHanesからその名も"SHIRO"ってTシャツが出てるけど、実際にはかなりクリームっぽい白。
SHIROだけ見てれば白く見えるけど、白Tの中ではかなり黄色味が強い。
逆にワークマンやドン・キホーテのは青みが強くて、パリッとした感じなんだけど、着比べるとわずかに顔色が悪く見える。
イエベとかブルベとかわかんないけど、個人的には黄色くもなく青くもないピュアなホワイトが好きだとわかった。
毎日着るからこその着心地
最終的にHanesのBeefy-Tに落ち着いたのは、色味も気に入ったけれど、形状として襟タグがなくて丸胴編みなのが良かった。
襟タグがないとチクチクしないし、丸胴編みだと脇に縫い目がないから着心地がいい。
あと、洗濯しても襟ぐりがへたりにくいのと、全体的に縮むこと。
これも試すまで知らなかったけど、Tシャツによって編み方が異なり、縦方向だけ縮んだり、袖だけ短くなったりする。
こういう細部が、毎日着るとなると結構効いてくる。
in-Tという発見
いろんなTシャツを試す中で薄物を試す際に乳首が透けないようグンゼのin-Tを試した。
Beefy-TのようなヘビーウェイトのTシャツだとそもそも透ける心配はないんだけど、in-Tを着ていると汗をすぐ吸ってくれてお腹も冷えない。
暑い日でもin-Tを着た方が体調管理が楽だとわかった。
運用システムの構築
HanesのBeefy-Tにすると決めて、クローゼットから8割ぐらい服を捨てた。
その上で、運用面を考えた。
ローテーション管理
Beefy-Tとin-T、それぞれ5枚をローテーションして、未開封ストックを3枚常備。
そして、干したTシャツをクローゼットの右からしまって、左から着る。
いわゆるFIFO(First In First Out)にして均等に全てのTシャツを着るようにする。
さらに、新しいTシャツを出した時に洗濯タグのところに開封日を油性ペンでメモして、いつから着てるか判別できるようにした。
全く同じ見た目のTシャツなので、短期的にも長期的にも使用頻度がわかるように。
コストと調達
Beefy-Tは定価3300円だけど、Amazonセールで年に3〜4回、2000円以下で買えるタイミングがあるから、ババっとまとめ買いしてる。
年間で5枚買い替えるとして1万円前後。
(毎回漂白漬けしてガンガン洗ったとしても1年はヘタリが見えない)
そしてHanesは世界中ほぼどこでも入手できる。
旅行先で汚れたり破れたりしても、現地で同じものが買える、この安心感は大きい。
メンテナンス
唯一の天敵はカレーうどんのような汁はねと、塗装などの作業汚れ。
でも、白いTシャツなら躊躇なく漂白剤を使える。
それでもダメなら、サクッと交換すればいい。そのために常時3枚以上ストックしてるわけだし。
変に高いTシャツを大事に着るより、気楽に扱える価格帯のものを消耗品として回す方が、精神的に楽だった。
2年続けてわかったこと
2年続けてみて、予想してた効果と予想外の効果、両方あった。
身体感覚の正常化
一番大きな変化は、自分の体温センサーが正常に動き始めたこと。
1年を通して同じ服を着ることで、寒い時にちゃんと鳥肌が立って、暑い時にちゃんと汗をかけるようになった。
季節ごとに服を変えるという文化的習慣が、実は身体の適応能力を奪ってたのかもしれない。
冬に厚着をして、夏に薄着をする。これって文化的には当たり前だけど、生物学的には身体を甘やかしてることになるのかもしれない。
「服が調節してくれる」と身体が学習してしまって、自前の体温調節機能が鈍る。
体調の変化にも気づきやすくなって、自分の熱っぽさとか代謝不足を早めに判断できるようになった。
decision fatigueからの解放?
着る服を固定した著名人がよく「意思決定を減らして楽になる」みたいなこと言うけど、個人的にはそんな大袈裟な変化はない。
「毎日同じ服を着てたら、周りにどう思われるか」も最初は少し気になったけど、今のところ「あの人、いつも白いTシャツだよね」って言われたことは一度もない。
逆に「白Tといえば俺」ぐらいのアイデンティティを確立したいもんだ。
ポジティブなフィードバックループ
予想してなかった効果として、白Tしか持たなくなったことで、体型を維持するモチベーションが生まれたこと。
「太ったら似合わなくなる」ってネガティブなプレッシャーと「この快適さを続けたい」ってポジティブな動機で筋トレへのモチベーションが上がった。
そもそも白Tだと着替えとかも考えずにジムに行けて良い。
総括
結論、「着る服を固定して良かった」と自分では思ってるけど、全員に勧めるつもりもない。
ファッションを諦めた中年、と言ってしまえばそれまでだし。
個人的には見た目の話より、「選択肢を減らすことで得られる自由」と「身体感覚の正常化」について2年かけて実験できたことが面白かったと感じてる。
この調子で下に履くものも固定したいんだけど、たとえばデニムに固定するとフォーマルな場所に行きにくくなるし、かといってフォーマルすぎるとアイロンがけの手間が発生したり着心地が悪そう。
白T的な超万能ボトムスを探す旅はまだまだ継続中。
