OpenClawを導入してみた(後編)

OpenClawを導入してみた(前編)
初めてのAIエージェントを導入したら、ちゃんと騒動に巻き込まれた話。 導入の経緯 先月、界隈で「Clawdbot」という...

前編は騒動の話で終始してしまったので、後編では2週間ほど使った主観的な感想について。

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自然言語で設定

振り返れば、最初の導入がいちばん面倒だった。
流行り始めて間もなかったから、情報が少なく、公式ドキュメントを読みながら、YAMLを手で書いて、APIキーを通して、サービスを起動して、動作確認して…2時間ほどにらめっこする時間が続いた。

ただし、一度動き始めたら世界は一変する。

「〜を有効にして」って言うだけで、勝手に設定ファイルの該当箇所を書き換えて、再起動までする。
数分後にしれっと「有効にしたよ」って返ってくる。
最初は「本当に?」と疑って、毎回diffを確認し、Webコンソールから詳細なログを掘った。
でも、何度か繰り返すうちに、少なくとも俺がやるよりは的確なことがわかってきた。
前述の通り、非常に情報が少ないタイミングだったので、自分のソースコードまで読み下って設定するOpenClaw本人に勝てるわけがなかった。

ちなみに、OpenClawの主要な設定ファイルは標準でGit管理されている。
とはいえ、「設定ファイルをコミットしておいてね」と言わないといけなかったりして、全自動なんだか半自動なんだかよくわからない。
設定とは別に、会話の記憶をEmbeddingして検索可能にしているのも面白い。
過去の会話から関連する情報を引っ張ってきて、文脈を補完する。
「前に話したあれ」がちゃんと通じる。
そういった「裏側の仕組み」すらOpenClawが勝手にやる。

Slackに集約される体験

OpenClawのバックエンドはClaude(現在だとOpus 4.5)なのに、Claude.ai(またはClaude Desktop)とは使用感が全く違う。
その理由の1つに、Slack越しの会話が挙げられる。
OpenClawは対話するためのインターフェースを"チャンネル"としてSlackやDiscord、LINEなどから自由に選べる。
俺の場合は最初にSlackをチャンネルにしたから、入出力が全てSlackに集約された。

昨今のLLMには長期記憶がある。
過去の会話を記憶して、文脈を引き継いでくれる。
でも、それはLLM側の記憶であって、人間側の記憶ではない。
つまり、「先週話したあれ、どうなった?」と聞いて、LLMは覚えていても、こっちが忘れていることがある。
Slackに集約されていると、「あれ、どうだったっけ?」をSlack検索で遡って、自分が何を頼んだか、相手が何を返したか、全部残っている。
そのメッセージのリンクを送って、ダイレクトに「この話の続きなんだけど」と指示し直すこともできる。
さらに、そういったやり取りをSlack内の別のメンバーに見せることもできる。
なんなら、同僚と一緒に会話を進めることもできる。
逆もある、同僚との会話に途中から参加させて「ここまでの論点、整理して」もできる。

LLMの長期記憶と、人間の外部記憶が、同じ場所に集約される。
それが思った以上に快適だった。

Linux機を背負ったClaude

せっかくのAIエージェントなので試しに、Oura Ringと連携してみた。

Oura Ring 4のご購入:Silver
Oura リング ー パーソナライズされた高精度な睡眠とアクティビティトラッカー:アクティビティレベル、睡眠サイクルをモニタリングし、主要な生体信号をトラッキング

リングで計測された心拍データや睡眠スコアがAPIで取得できるのは知っていたので、
「OpenClawからOura Ringのデータを使えるようにしたい」と雑にリクエストした。

「Oura APIより、Personal Access Tokenの方が楽だよ」
そして、昨日のデータから本日の健康指針が毎朝Slackに届くようになるまで、わずか5分だった。
週末には週次サマリーも届くようにした。

驚愕だった。
Linux機でSMTP/POP3サーバとかSSHサーバの構築したことがある人はわかると思うけど、
「大したことないが、実際やるには面倒」みたいなものがごっそり無いのだ。
OpenClawは「皆まで言わなくても」レベルで「こんな感じのことができるけど、修正点ある?」で返してくる。

ClaudeやGeminiでも十分便利だと思っていた。
でも、Linux機を背負わせるとさらに次元が変わる。
ファイルを読み書きできて、コマンドを実行できる。
ってことは、足りないライブラリを自分でインストールすることができる。
そして、定期実行できる。足りないスクリプトも勝手に用意される。

ご存知の通り、世の中にはapt installbrew installで手に入る便利ツールが膨大にあるので、
これらを使いこなせるOpenClawは手足が生えたClaudeと言って良いかもしれない。

目的の純度

2週間触ってみて、LLMがより道具として進化した感覚がある。
言い換えれば、「実際やるには面倒」がごそっと無くなったおかげで、「何をやりたいか」だけ純粋に考えられるようになった。
「OpenClawのセキュリティ面が心配だなぁ」→「毎朝、本家の開発進捗と、世間でのニュース、問題事例を集めて報告するよ」
「長野まで雪道が心配だなぁ」→「途中経路の天気とライブカメラを確認したけど、早朝と夜間を避ければ大丈夫そうだよ」

…いや、もっと酷いかもしれない。
「OpenClawのNodeってよくわかんないなぁ」→「Gatewayに接続する周辺デバイスだよ、例えばiPhoneのカメラを接続できるよ。使ってみる?」
「OpenClawって何ができるかわかんないなぁ」→「現時点で公開されたスキルは50種を超えてた、Todoist連携あたりから触ってみる?」
もう「何をやりたいか」すら考えてないかもしれない。
これは、車とか家に近い領域で、「移動する」「外気から身を守る」といった本来の目的を超えて「なんとなくドライブしたい」「何も予定がない時にとりあえずいる場所」みたいな目的のない道具(手段?)の域にまで進化してる。

前編でも「今のところ、それなりのリテラシーが要求される」と書いて、たしかに現時点では限られた人の玩具に留まってるけど、
これがレイトマジョリティにまで浸透するのはシンプルに時間の問題。
裏の仕組みがちゃんと透けて見えてる人からすれば過度な神秘性や極端な万能感は感じない、
今までも技術的に可能なのは知ってて、やるのが面倒だったことが楽にできるようになった、と言うだけの話なんだけど、
普通の人にはそう見えないのかもしれない。
ともあれ、その時、改めて人間に問われるのは「目的」の純度だろうな、と言う予感がする。

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