Bambu Lab X1-Carbonを買ってみた

開いた口がふさがらない、って本当にあるんだ。

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経緯

Snapmaker A250Tで満足していたんです。
ところがある日、どうしてもカーボンファイバー含有フィラメントを試したくなりまして。
CFは硬いので、普通の真鍮ノズルではすぐに摩耗してしまうし、0.6mm径にしないと詰まりやすいと聞きまして。
残念ながら、A250Tには真鍮0.4mm以外の選択肢がないので、諦めようかと思った矢先、Bambu LabのX1-Carbonを見つけてしまいました。
(A250Tのノズルについては後日談があり、気が向いたら書きます。)

X1-Carbonは、その名の通り、CF対応で初期装備が高硬度スチール製ノズル。
しかも、ヘッド制御がCoreXY方式
Voronで話題になってたCoreXY方式、試してみたかったんですよね。
「Appleが3Dプリンタを作ったら」なんて動画を見て、気づいたら買ってました。

Why The Bambu Lab X1 Carbon is a PhD Master Class in 3D Printer Design

実演

開封


大阪に在庫があったようで発注からわずか2日で着弾。
開封と組み立ての時点で「こいつ、できる」感がハンパない。
サイズ感で言うとQIDI i-Mate Sがちょうど良い比較対象だけど、まず、軽い。
X1-Carbonの方が造形領域は広いし、AMF(多フィラメント自動切り替え装置)も入ってるのに。


そして、パッキングが完璧。庫内にAMFを入れても問題ないよう設計された固定パーツが優秀。

付属品も、ホットエンドからベッドシート、ノズルクリーナまで消耗品が1セット入ってて、ストア価格で2万円分ぐらい入ってる。

開梱したらケーブル2本とチューブをAMFにつないで、タッチパネルを付けるだけ。
PLA、PLAサポート、PLA-CFと3本もフィラメントが付いてきて、内蔵メモリには3D Benchyのデータが入ってる。
初手でやりたいこと、全部先回りしてくる。すごい至れり尽くせり感。

試技


で、24分後、3D Benchyの出来上がり。
意味がわからん。試しにCuraでA250T向けにスライスしたら2時間29分って言われたよ。
そうでしょ、どんだけ速さ優先の設定にしたって1時間は切らないでしょ。
でも、X1-Carbonなら、25点の自動レベル調整とか全部込みで24分。

3D Benchy – Bambu Lab X1-Carbon #01
3D Benchy – Bambu Lab X1-Carbon #02

いや、マジで意味わからん。開いた口が開きっぱ。
インフィル埋めてるところなんて、速すぎて目で追えないし、動きが速いせいで筐体もめちゃくちゃ揺れてるのに、揺れたまま正確に細い線を引いてる。
3Dプリンタ仲間にも見せたけど「え…なにこれ…え?」しか言わない。
CoreXYが速いとは聞いてたけど、一般的な50mm/sに対しての80mm/sとか、せいぜい1.5倍程度でしょ、って思ってたのに24分と2時間29分じゃ6倍も違うじゃん。
もう俺が知ってるFDMの3Dプリンタじゃない。

特徴

普段ならPros/Consで書くけど、X1-Carbonは3Dプリンタとして欠点がなさすぎて、「特徴」としか書けない。
せっかくなので、公式サイトや他のレビューではあまり触れられてない点を。

サポートが超充実

3Dプリンタを買ったのが約2年ぶりなので最近の普通がわかってないけど、
少なくとも俺の知る限りで、こんなに公式Wikiが充実してるのを見たことがない。
Wikiの説明を2,3覗いてみたら理解いただけると思うけど、図や動画が豊富なだけでなく、この通りに部品単位で販売してる公式ストアがやばい。
外枠以外は全部買えそう。
「え、ここまで分解させて良いの?」ってこっちが心配になるレベルで、それだけ製品に自信があるのが伝わってくる。

どのギミックも素晴らしい

特にAMF、まったく期待してなかった。

フィラメント詰まりなんて3Dプリントのトラブル頻度トップで、それを4つでやったら、どう考えてもトラブル4倍でしょ。
でね、PLA-CFを試したときに実際1回詰まったんだけど、エラーメッセージが完璧でどこで詰まってるか、前述のWikiのどこを見ればいいか、すぐわかった。
そもそもCFとかTPUみたいな詰まりやすいフィラメントはAMFが非推奨なんだけど、外部スプールホルダーへの切り替えも一瞬。
というか、フィラメントの切り替えが、スプール置いて先っちょをちょっと挿し込むだけ。
純正フィラメントならRFIDタグ見つけて勝手に設定値を読み込む。ここまで、ほんとにタッチパネルに1回も触らずに換装可能。

次に驚いたのがヘッドカバー。

フィラメントが詰まったら、まずはここを疑うじゃないですか。
なんと、マグネット固定。最初、あまりに簡単に外れるからネジ締め忘れの初期不良かと思った。
「CoreXYだからヘッドをなるべく軽くしたい、ネジ省きたい」までは理解できるんだけど、「じゃ、プラ爪で固定」とかに妥協すると思うんだよね。
ユーザがどうしたいか熟知してて、それがデザイナーにまできちんと伝わってる。


アラを探そうとすればするほど返り討ち。
有毒性フィラメント対策の活性炭フィルタもちゃんと交換しやすく納まってる上に、このフィルタのための空気排出口が別に用意されてて、
ベッドシートは裏表が異なる素材向けになってるだけでなく、「PLAの時はこっち」「ABSならこっち」とわかりやすい印字付き。
タッチパネルも、5インチの1280×720を贅沢に驕る。非タッチパネルの3.5インチXGAとかでも誰も文句言わなかったと思うよ?

ソフトウェアも素晴らしい

まず、スライサ、Bambu Studio。

試してないのでわからんけど、特に多色モードの時はCuraなどのサードパーティでなく純正のスライサを強いられると思うけど、
今んとこ、普通にCuraより優秀だわ。マニュアル見なくても全然余裕。
個別オブジェクト、が並んだ作業領域(= 1ベッドプレート)、のさらに上位に「プロジェクト」の概念があって、1回で出力しきれないようなケースも管理が容易。
庫内カメラでのタイムラプス撮影なんかも統合されてるし、「タイムラプスを滑らかに」って設定すると「じゃ、プライムタワー作ります」って関連する他の項目も自動で設定してくれる。
自動配置も賢くて、右側に寄るとヘッド(についてるLIDAR)がぶつかりやすいとかわかってる感じで配置し直すし、
他の人が作った3mfファイルを読み込んだときも、標準値とどこが違うのかわかりやすく表示してくれる。

さらに地味だけど、スライサによっては出力進捗を「積み重ねる層の数」で計算してて、たとえば3D Benchyみたいな最後に煙突だけちょっと残るモデルでも85%とか言うんだけど、
Bambu Studioは「Gコードの行数」で計算してるらしく、進捗パーセンテージと残り時間がほとんどズレない。
これは進捗が(スマホ向けのアプリからも監視できるから余計に)気になって地味に見張ってしまうユーザにとって、温かい気遣い。

本機の売りとされるLIDARとAIを用いたスパゲッティ検出は、幸いなことにまだ見舞われてないので、わからない。
見舞われてないながら、1層目を出力した時点で、わざわざ1回計測してる様子が見てとれた。
3Dプリンタ使ってる人ならわかると思うんだけど、1層目が成功してるかどうかでだいたい勝負は決まるので、1層目を手厚くチェックするアルゴリズムにしてるのは「わかってる」感ある。

純正フィラメントが思ったほど高くない

そもそも社外フィラメントも難なく使えた。
前述のRFID認識ができなくてよければ、条件はプラスチック製のスプールに巻かれているかどうかだけ。
その替えスプールだけ買えるし、なんならスプールを自作するためのモデルが内蔵メモリに入っているので、純正フィラメントにこだわる必要がない。
なのに、純正フィラメントが思ったほど高くない。
たとえば、PLAの1kgが4000円。Amazonで評価の高い社外フィラメントで3000円。
3D Benchyが11gぐらいだから、33円と44円の差。
国内からの発送なので2,3日で届くし、8000円で送料無料だから、2巻以上買えば良いだけ。
この程度で純正の安心感を買えていいの?

所感

だいぶ序盤からカーボンファイバー関係なくなっちゃった。
いや、PLA-CFも期待通りの出来だったけど。

PLA-CF Bolts – Bambu Lab X1-Carbon


CF関係なくなっちゃったにしても、これはすごいわ。革命。
たまたま2年おきに3Dプリンタを買い替えて、その進化を見てきたけど、鈍化するでもなく、むしろ加速してる。

正直、お値段は25万円弱と安くないです。
ただ、昨今の円安事情を考えたら20万円ぐらいとして競合と比較するべきだと思うし、当時30万円だったSindoh 3DWOX1を思い返しても、X1-Carbonは35万円でも許せる。
初めて3Dプリンタを買う人には「25万円出せるなら迷わずX1-Carbonを買え」って言いたい。
だけど、初めての1台でこれを買っても、凄さがわからないと思う。
それぐらい高次元でUser-Friendlyが詰まってる。
久しぶりに、エンジニアとしては悔しいけど悔しすぎて鼓舞されるって製品でした。

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